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肉人参/人畜無骸
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年6月10日
- 書店発売日
- 2021年6月10日
- 登録日
- 2021年3月29日
- 最終更新日
- 2021年6月10日
紹介
回春の妙薬・金剛人参を主君のために探し求める武士の慟哭の末路を描く「肉人参」。
現代に時間を移し、孫をあいてに、金剛人参を服用したじっちゃんの物語「じっちゃんの肉人参」。
他に「プラネット・ブロブディンナグ」「人畜無骸」を含む四作を収録。
初出
「肉人参」……「バディ」2017年4、6月号
「じっちゃんの肉人参」……「バディ」2017年9、11月号
「プラネット・ブロブディンナグ」……「バディ」2015年11~12、2016年2、4、6、8、10、12月号
「人畜無骸」……「バディ」2009年9~11月号
目次
◎肉人参
◎じっちゃんの肉人参
◎プラネット・ブロブディンナグ
◎人畜無骸
・初出一覧
・あとがき
・プロフィール
前書きなど
本書の刊行に際して、版元ポット出版プラスの皆様、今はなき掲載誌「バディ」関係者の皆様、応援してくださった読者の皆様、そしていつも横で私を支えてくれる《とうちゃん》に、心より御礼を申し上げます。
この『肉人参/人畜無骸』は、復刻版を除く新作ゲイエロマンガ単行本としては、2017年の『奴隷調教合宿』以来4年ぶりの発行になります。その間に、単行本としては復刻版『嬲り者』『柔術教師』、全年齢層向けマンガ『弟の夫』『僕らの色彩』、語りおろし本『ゲイ・カルチャーの未来へ』、編纂画集『日本のゲイ・エロティック・アート vol.3』などを上梓させていただきましたが、ゲイエロマンガを発表できる商業媒体、つまり紙媒体によるアダルト向けゲイ雑誌は、2019年1月の「バディ」休刊に続き、最後に残った「サムソン」(こちらはお仕事をさせていただいたことはありませんでしたが)も2020年4月に休刊し、完全に消滅しました。かつてゲイ雑誌が4誌、6誌と覇を競い、別冊なども旺盛に出版されていた時代を知る身としては、何とも淋しく思います。
現状、私のゲイエロマンガ発表の場は、紙や電子書籍による同人誌や、pixivFANBOXといったネット上の創作支援ファンコミュニティになっています。これはこれで様々な可能性もあって興味深いですが、やはり月刊のゲイ雑誌でのレギュラー掲載と比較すると、締切や稿料が発生しないということもあって、制作ペースがガクンと落ちてしまうのも事実です。
今後も変わらず「ゲイが描くゲイ向けのエロマンガ」にはこだわっていきたいですが、はてどうなりますやら……。
「肉人参」
担当編集氏に「次のマンガだけど、何かリクエストとかある?」と尋ねたところ、「時代物とか和物でお願いします」ということだったので、描いた作品。
プロットを考えていたところ、ふっと「肉人参」という言葉が頭に浮かび、そのキャッチーな響きが気に入ったので、そこからイメージを膨らませました。ゲイ雑誌の掲載基準として、薬物の描写にはかなり制約がありましたが(昔はともかく、近年では実在する薬物を出すことは厳禁でした)、時代物で架空の薬草であれば問題なかろうと、金剛人参というものを考案。
この金剛人参の設定がうまく鍵となり、コンパクトかつ少しひねりも入った、まとまりの良い短編になったのではないかと思います。
「じっちゃんの肉人参」
前作『肉人参』で考えた金剛人参を使いつつ、内容や雰囲気は正反対の話をやってみたくて描いた作品。というわけで、時代物に対して現代物、バッドエンドなシリアスものに対してハッピーエンドでユーモラスという、対象的な内容に。
祖父と孫にしたのは、イケてる白ヒゲじいちゃんを描きたいという私の趣味。自分が加齢したこともあってか、近年はこういうキャラを描くことが増えました。
「プラネット・ブロブディンナグ」
全年齢層向けマンガ『弟の夫』と同時期に、「バディ」で連載していた奇想ゲイエロマンガ。リアルでシリアスな日常世界と、エロのために特化した異世界を、同時期に並行して描くというのは、それぞれの気分転換にもなって精神衛生上なかなかよろしかったのを覚えています。
フェティシズムやサドマゾヒズムといった視点から見て、SFやファンタジーの良いところは、世界の構造そのものを性的に創造できるところ。『猿の惑星』や『家畜人ヤプー』に代表されるような、登場人物にその意志がなくても、その世界で生きること自体がフェティシズムやサドマゾヒズムを体現してしまうという設定は、私にとって大いに魅力的です。
というわけでこの作品では、体格差や異種姦といったフェティシズムと、人間の家畜化というサドマゾヒズム・ファンタジーが、世界設計の根幹になっています。そこに《通常》の感覚を持つ人物が放り込まれ、最終的に順応してしまうことは、果たしてバッドエンドなのかハッピーエンドなのか……そんな感覚の混乱を味わっていただければ。
単行本収録にあたって、雑誌掲載時にページ数の都合で削った、ラストシーン2ページを復元。
「人畜無骸」
これも『プラネット・ブロブディンナグ』と同様の発想で、それ以前に作品化を試みたもの。やはり単行本収録にあたって、トーン仕上げなどほぼ全ページを改稿。
最初の思いつきは、「『ロード・オブ・ザ・リング』の世界で、『猿の惑星』をやってみたら面白いのでは?」というものでした。ただ、如何にもファンタジー然とした中世風の世界だと、ちょいとオリジナリティに乏しくて面白みに欠けると思い、西部劇風にしてみました。種族構成も、エルフは出さずに獣人を入れてみたり。
この世界には一応、現実の我々の世界と並行世界的に存在していて、構成種族は異なるものの、地理や歴史はある程度共通しており、ただし内燃機関や火薬が発明されなかったという裏設定があります。テクノロジーが発達しなかった理由は、ある時代を境に戦争が一切おきなくなったため。その時代、人類こそが戦争を引き起こす火種であると他の種族から糾弾され、彼らの合議によって知的支配種族の地位から引きずり降ろされ、やがて退化し家畜化していったとか、作中に雌の人畜が出てこないのは、交配が完全にコントロールされているためとか、まぁ色々と。
こういった設定を考えるのは楽しいので、当初はこれを使って幾つか連作短編を描き、その集合体で手塚治虫の『鳥人大系』のようなクロニクル形式の作品にできれば面白いのでは……などと思っており、その前提で単行本収録も見合わせていたのですが、そもそも作品の特性が商業ゲイ雑誌には向かないとか、ゲイエロマンガとして仕上げるには難しい設定もあるとか、まぁ色々あってクロニクルにするプランは断念しました。
放棄したアイデアの数々は残念ですが、これはこれで独立した短編として見ても、なかなかユニークな作品になっているのではないかと、自分でも気に入っている一本です。
2021年3月12日 田亀源五郎
(あとがきより)
版元から一言
電子書籍版も紙版と同時発売予定です。
上記内容は本書刊行時のものです。