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日本書紀と古事記
誰が人と神の物語をつくったか
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年6月10日
- 書店発売日
- 2021年6月10日
- 登録日
- 2021年4月28日
- 最終更新日
- 2021年5月24日
紹介
日本古代史の通説を根底から覆す!
――日本書紀が主、古事記が従であり、天武天皇によって構想され、藤原不比等によってプロデュースされた――
石渡信一郎、井原教弼、フロイト説を援用し、記紀をめぐる種々な論点に触れながら、その成立過程を解き明かすと見えてくる、驚くべき古代史の真相。「アマテラスを祖とし神武を初代天皇とする万世一系天皇の物語」の虚実に徹底的に斬りこむ。
《目次》
序 章 新旧2つの渡来集団と古代日本
第1章 干支一運60年の天皇紀
第2章 古代日本建国のシナリオ
第3章 日本書紀と古事記
第4章 アマテラスとタカミムスヒ
第5章 神武天皇こと神日本磐余彦
第6章 人と神とを統治する物語
第7章 天武・持統・不比等のアマテラス
終 章 アマテラスと八幡神
目次
《目次》
序 章 新旧2つの渡来集団と古代日本
第1章 干支一運60年の天皇紀
第2章 古代日本建国のシナリオ
第3章 日本書紀と古事記
第4章 アマテラスとタカミムスヒ
第5章 神武天皇こと神日本磐余彦
第6章 人と神とを統治する物語
第7章 天武・持統・不比等のアマテラス
終 章 アマテラスと八幡神
前書きなど
はじめに
本書は3つの仮説をベースにして上梓した。1つは『応神陵の被葬者はだれか』(1990年、増補新版『百済から渡来した応神天皇』2001年)で明らかにされた、日本古代国家は朝鮮半島から渡来した新旧2つの渡来集団によって建国された」という石渡信一郎の説である。この説は日本書紀と古事記に依存する従来の日本古代国家の起源=天皇の歴史と大きく異なる。
2つは井原教弼(工学畑の在野の研究者)が明らかにした「干支一運60年の天皇紀」という古代王権論である。
井原教弼は大和書房の季刊誌『東アジアの古代文化』(1985年42号・特集古代王権の構造)で、田村圓澄・上田正昭・吉野裕子ら錚々たる研究者の論文に交じって「第7代孝霊天皇から第16代応神天皇までの10代600年は、干支は辛未に始まり庚午に終わる60年の10個の万年ごよみを並べたものであった」という、“歴史改作のシステム”を発表した。井原教弼の論文の詳細については本書第1章で具体的に説明する。
3つはフロイトが最晩年の著作『モーセと一神教』で明らかにした「心的外傷の二重性理論」である。フロイトの『モーセと一神教』は、ヒトラーがオーストリアに侵攻する2年前の1937年頃から書き始め、ロンドン亡命後の1939年に出版された。この本のテーマは「モーセは1人のエジプト人であった」という説である。石渡信一郎の「応神陵の被葬者は百済人である」という説に類似する。
フロイトのモーセ=エジプト人説は、文庫本として渡辺哲夫訳の『モーセと一神教』(ちくま学芸文庫、2003年)と中山元訳『モーセと一神教』(光文社古典新訳文庫、2020年)が市販され、広く読者に知られるようになった。しかし“モーセを語る人はフロイトを語らず、フロイトを語る人はモーセを語らず”で、長い間その価値は認められなかった。
フロイトは「心的外傷の二重性理論」について「2つの民族集団の合体と崩壊。すなわち最初の宗教は別の後の宗教に駆逐されながら、後に最初の宗教が姿を現し勝利を得る。すなわち民族の一方の構成部分が心的外傷の原因と認められる体験をしているのに、他の構成部分はこの体験に与からなかったという事実の必然的結果である」と指摘している。
本書では「最初の宗教は別の後の宗教に駆逐されながら、後に最初の宗教が姿を現し勝利を得る」というフロイトの説を石渡信一郎の命題「朝鮮半島から渡来した新旧2つの渡来団による古代国家の成立」に援用した。
朝鮮半島から先に渡来した旧の加羅系集団は崇神の霊アマテル神を祀り、後に渡来した新の百済昆支王を始祖とする百済系集団は応神=昆支の霊=八幡神を祭った。645年の乙巳のクーデターで蘇我王朝3代(馬子・蝦夷・入鹿)が滅ぼされてからは、旧のアマテル神はアマテラスとして登場した。
またフロイトは「心的外傷」を次のように言い換えている。「心的外傷のすべては5歳までの早期幼年時代に体験される。その体験は通常完全に忘れ去られているが、心的外傷→防衛→潜伏→神経症発生の経過をたどる。人類の生活でも性的・攻撃的な内容の出来事がまず起こり、それは永続的な結果を残すことになったが、とりあえず防衛され忘却され、長い潜伏期間を通して後、発生すなわち出現する」。
晩年のフロイトはそれまでの神経症研究の集大成として、神経症状に似た結果こそ宗教という現象にほかならないという仮説を立てた。私自身が神経症にかかったことがあるのでよく理解できる。この体験は『天皇象徴の起源と〈私〉の哲学』(2019年)に書いたのでご覧いただきたい。
これら石渡説、井原説、フロイト説を合わせると、日本の正史とも言われる日本書紀の「アマテラスを祖とし神武を初代天皇とする万世一系天皇の物語」の虚と実を識別できると信じている。
従来、日本書紀と古事記は、「古事記は古く、日本書紀は新しく、別々に編纂された」とされ、「記紀」と表記されてきた。
しかし本書では「日本書紀が主、古事記が従であり、天武天皇によって構想され、藤原不比等によってプロデュースされた」という意味合いを込め、タイトルは「日本書紀と古事記」(「紀記」)に逆転したことをお許しいただきたい。
版元から一言
国史編纂をめぐる様々な動きと古代史の真相!ワクワクします。
上記内容は本書刊行時のものです。