発行:明石書店
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四六判 504ページ 並製
定価:3,500円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2775-4 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年05月
書店発売日:2008年06月02日
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広島・長崎の被爆者の1割は朝鮮半島出身者。彼らは植民地支配の中でどのように日本にi移住し被爆したのか。病苦と周囲の無理解の中での帰国後の生活。十分な補償を受けられず日韓両政府に何を望んでいるのか。韓国原爆被害者初の証言集。訳者解説・年表を付す。
目次
出版にあたって(鄭根埴)
韓国現代史と原子爆弾被害者の証言の意味(鄭根埴)
証言から歴史へ(晋珠)
[証言]
原爆被害者運動の現況と展開
郭貴勲/徐錫佑
全羅北道地域の原爆被害者たち
郭在榮/朴道燮/安貞淑/鄭大一/全笑子/崔英鐸/柳益善/徐康烈
全羅南道地域の原爆被害者たち
金東一/金福守/金仁泰/盧貴業/朴洪圭/李吉雨/李興福
光州地域の原爆被害者たち
李化錫/朴國●(=火玄)
済州地域の原爆被害者たち
姜尚興/呉聖豪
韓国の原爆被害者たちの願いを私たちの願いに──二一人の被爆者の口述体験記が語るもの(市場淳子)
訳者あとがきにかえて──韓国の原爆被害者たち、二〇〇三年から二〇〇八年の軌跡
韓国原爆被害者関連年表
前書きなど
出版にあたって(鄭根埴:一部抜粋)
(…前略…)
口述史は、公式的な資料では接近するのが難しい社会的弱者の記憶と口述に基づいて構成されたもう一つの歴史である。口述は、歴史的事実についての証言と、これを経験した主体の自己省察、そして自身の生涯をその事件に投射した叙事の結合物である。別の見方をすれば、社会的弱者の口述史は、あらゆる困難のなかで「生き残った者」の苦痛や哀歓によってつづり合わされた生を、歴史的に再構成した結果であるとも言える。被爆者の口述史はこれに属する。
この本は、韓国に生存している被爆者のうち、湖南地域に居住する人たちの口述を整理したものである。韓国の被爆者はソウルや大邱、特に陜川に多く住んでいるが、便宜上、湖南地域に居住している人たちを中心に取り上げた。実のところ、この本は、韓国の被爆者の最初の生々しい声だと言うことができる。今まで、〔韓国で〕被爆者の声をこれといって聞くことができなかったのは、究極的には、原爆を投下したアメリカや、広島または長崎に多くの朝鮮人を強制連行した日本の責任を追及する状況を、分断体制や軍部権威主義政権が構造的に許容しなかったためである。
しかし、技術的な困難も無視できない。四方に散らばって住んでいる被爆者に会ってインタビューし、この人たちの経験を文章に整理することは、決して易しい作業ではない。この人たちの言葉を心から聞き取るには、豊かな感受性と忍耐が必要だ。大部分の被爆者は、誰もその人たちの声に耳を傾けようとしなかった長い歳月を生き抜くことができずに、この世を去った。現在の生存者は、相当数が幼いときに被爆を経験した人たちである。被爆体験は代表的な閃光の記憶として残っているが、あまりにも長い歳月が流れ、被爆体験を構成している周辺の補助的な記憶は、ぷつぷつと断ち切られたり、あちこちに破片化したりして、記憶の世界を浮遊している。したがって、とぎれとぎれになった記憶を取り戻し、破片化した記憶をくっつけてつなぎ合わせようとすれば、さまざまな背景知識と補助装置が必要だ。被爆体験に関する研究がほとんどない韓国の状況で、このような条件を備えるには多くの困難が伴う。
話し言葉を文字に移すのも難しい作業である。話し言葉と文字化されたものは異なる。話し言葉は生き生きしている代わりに、省略、飛躍、倒置されているものが大半であり、また、苦痛、嘆き、悔恨、ため息、涙が入り交じっている。文字化するということは、これらを省いて筋道を立てたり、ある程度は標準語に転換させたりすることを意味する。時々、この過程で、文字化されたものは元来の意図とは異なって表現され、まったく異なる脈絡に位置づけられたりもする。
究極的には、私たちは他人の経験を分かち合うことはできても、その経験の主体そのものになりきることはできない。身体自体が被爆の経験を物語っているときに、その苦痛と恨を、どうやっていくつかの言葉で身体から取り出し一つの完成した意味のかたまりに作りあげて語ることができるのか。さらには、どうやってその語りをそれとまったく同じ重みのある文に文字化することができるのか。こうした話し言葉や文字化されたものが持つ身体性に対する水準の違いは否定できないが、語られた被爆の経験が文字化されることによって、より多くの人がその被爆の経験を共有できるという利点もまた否定できない。
(…後略…)
著者プロフィール
鄭 根埴(チョン グンシク)
ソウル大学校社会学科教授。1956年韓国全羅北道益山生まれ。ソウル大学校社会学科大学院修了。1985年から全南大学校助教授・教授、2003年7月より現職。専攻は韓国社会史、社会運動論。日本語訳に「植民地支配・身体規律・『健康』」(『生活の中の植民地主義』水野直樹編、人文書院、2004年)がある。
晋 珠(チン ジュ)
全南大学校社会学科修士課程修了。修士論文「原爆被害者の証言と記憶に対する内容分析」。現在、香港アジア人権委員会研究員、オーマイニュース海外特派員。
市場 淳子(イチバ ジュンコ)
1979年に初めて韓国を訪れ原爆被爆者の実態に接して以来、「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」の活動に携わり、現在会長。朝鮮語講師。著書に『ヒロシマを持ちかえった人々──「韓国の広島」はなぜ生まれたのか』(凱風社、2000年、新装増補版=2005年)がある。
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